太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語。1話が50人だけのために書かれた「ゆうびん小説」が、いまあなたのもとに。
5股をかけていた星野一彦は、借金苦に陥り2週間後に<あのバス>と呼ばれるバスに乗せられ、どこか怖ろしい場所へ連れて行かれる事が決まっている。その前に付き合っている女性にお別れを言いたいといった星野。そこでお目付け役の身長180センチ、体重180キロの巨漢女性繭美を偽りの婚約者ということにして、5人の女性たちに別れの挨拶に行くというお話である。
各章、始まりはそれぞれの女性が星野とであったときのこと。そして現在の話は「あれも嘘だったわけね」で始まります。5股もかけちゃうような女性ってどんな男なの?!って思います。「若者らしさと成熟した大人の雰囲気を併せ持つ星野。短い髪に、高い鼻、目と耳が大きく、整っているとは言いがたいものの、個性はある」と一人の女性は語ってます。ひどい男なのかと思えば、単なる優柔不断で、だけど困ってる人を見捨てることが出来ない優しい男なのかな。
星野の婚約者という設定になっている繭美。彼女のすごさったら想像を絶しています。とにかく他人の迷惑なんて全く考えていない。いや、むしろ他人がいやな顔をするのを見るのが繭美の喜びって感じ。話の途中で小箱から出した耳かきで耳掃除をする。「常識」「気遣い」などの言葉を塗りつぶした辞書を持ち歩く繭美。繭美の辞書は書いてある字の方が少ないんじゃないかな。人を食ったような喋り方、
5人の女性との別れですが、哀しいだけじゃなく、なんとなく笑えたり、すごく幸せな気持ちになれたりするのです。最後の話が一番素敵だなって思いました。
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