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柳 広司
角川グループパブリッシング
(2008-08-29)
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昭和12年秋、陸軍中枢部の多数の反対意見を押しのけて、結城中佐の提案で設立されたスパイ養成学校“D機関”。元スパイという経歴を持つ結城の下、互いの本名も知らぬまま、スパイに求められる様々な訓練を受けた訓練生たちは、優秀なスパイへと成長し、次々と世界中で活動していく。
第62回 日本推理作家協会賞 長編及び連作短編集部門を受賞。第30回吉川英治文学新人賞を受賞。2009年本屋大賞ノミネート作品。2008年度の「このミステリーがすごい!」で第2位と注目度の高い本。最近出た「ダブル・ジョーカー」は続編なんですよね。
結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。超難関試験を突破した一期生は、外国語、学問はもちろんのこと、書類を瞬時に記憶することが出来、爆薬や無電の扱い方、自動車や飛行機の操縦、金庫破りやスリ、変装術、女の口説き方などの厳しい訓練を受け、長髪、背広姿で互いを偽名で呼び合った。
噂ではあるが、結城中佐は長年にわたって海外でスパイをしていたが、仲間の裏切りにより敵に捉えられた。厳しい取調や拷問に耐え、隙を見て脱走したと言われている。その結城中佐が訓練生に叩き込んだ言葉は「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」スパイは捕まったら自ら命を絶たなければいけないんだと思ってました。「意識の多層化」などの訓練で、不利な状況を変えていくとは。「とらわれてはいけない」そんな言葉も印象的でした。
軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、軍の猛反発を招いた。何かにつけて陥れようとする軍だけど、結城中佐の方が一枚上手。魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。
それにしてもD機関の一人ひとりの能力もすごいものがあるとは思うのですが、何と言っても結城中佐です。結局はみんな彼の駒でしかないんだなぁって思います。
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