左岸
江國香織
福岡で隣同士に住んでいた茉莉と九―。踊ることと兄が大好きな茉莉は17歳で駆け落ちし、同棲、結婚、出産を経験する。数々の男と別れても、いつもどこかに、影のような九がいて…。江國香織と辻仁成の奏でる二重奏ふたたび。
分厚いんだけど、あんまり動きがないというのか、淡々と語られる一人の女性の歴史になかなか読書が進まない。江国さんじゃなかったら読みきったかどうか不明。ただ、数日にわたって読んだので、主人公・茉莉の生活にどっぷりと浸ってしまい、私の脳内言葉は「なんちゃって九州弁」になってたし、自由気ままで奔放な人生を歩んでいる気持ちにさえなりました。
九州の言葉で書かれているからなのか、あまり江国さんらしくなかった。でも所々で江国さんらしい言葉遣いがあって(「ままならない」だとか)ニヤリとしました。
物語は主人公・茉莉の小学校入学前から始まります。2歳年上の兄・惣一郎と一緒に居れば幸せだった茉莉。お隣に住む同い年の九との3人の素晴らしい日々が、惣一郎の自殺という思いがけない出来事により突然消えます。そしてそれからの茉莉は母親のイギリス留学、早熟な恋や東京への駆け落ち、母の出奔、始との出会いから妊娠・結婚・出産とめまぐるしく変遷していきます。始との幸せな日々も始の死によって終わり、その頃絵のモデルにと誘われパリへ。その後は娘さきと一緒に東京で暮らし、一人の男性との恋の後、地元へ戻って自分の店をオープン。波乱万丈の人生です。
他人に打ち解けようとせず、わが道を行く。強いんだけど、男が現れるとそれまでの自分をすべて捨てしまう。そして男が去ると、また強い女性に戻るのです。そんなところがかわいらしいなって思いました。
⇒ 数(自然数)は、幽霊である。 (11/17)
⇒ 式神自然数 (10/21)
⇒ アスラン (04/07)
⇒ 脱皮中 (11/10)
⇒ 三角点 (10/20)
⇒ 鶯張り (10/02)
⇒ ゆっぴ (09/26)
⇒ かぶの入門 (06/12)
⇒ 由紀 (03/16)
⇒ 秋緒 (02/02)