ドロップス
永井 するみ
夫から「ママ」と呼ばれる事をきっかけに、夫との距離を感じる夏香。多くの男達と気の向くまま関係を持つシングルマザーの声楽家リリア。完璧主義の夫と離婚した後、同窓会で久し振りに会った昔馴染みから誘われて戸惑う遼子。不倫の末にお互いに大切なものを失った夫と静かに暮らす科子。この4人の女性を連作短編で描いた作品。
4人の女性のうち3人は30代。劇的な変化が訪れる訳じゃなく、彼女達の日常が綴られていきます。色んな人の色んな心情に「わかる!わかるよ〜」って。4人は少しずつつながっていて、それぞれ自分が今置かれた立場を思いちょっと落ち込み、他の人を見ては自分に無いものを見つけて羨ましいって思います。だけど、その羨ましがられている人にもその人なりの悩みがあって、他の人を羨ましいと思ってる。人生ってそういうものなんでしょうね。科子がステンドグラスからの光の下に立つと元気になれるといいます。そういう空間、時間があったら素敵です。
夫との関係に悩みながらも、無邪気な娘に気がつかないうちに励まされている夏香。沈んだ気持ちで帰ってきて、遅い時間なのに起きていた子供と一緒に子供の布団に寝てしまう遼子。子供ってそういう存在なんだよなぁってしみじみと思いました。落ち込んでいたって、いやな事があったって子供はいつも同じように彼らの生活を続けていて、そんな子供を見ていると元気が出るものなんですよね。
ラストのコンサート。夏香の夫に対する気持ち、遼子の原田に対する気持ち、リリアの彼に対する気持ち、そして科子の夫と前妻との子。そんな事が全てすっきりとして、読み終わって晴れやかな気持ち。
⇒ 数(自然数)は、幽霊である。 (11/17)
⇒ 式神自然数 (10/21)
⇒ アスラン (04/07)
⇒ 脱皮中 (11/10)
⇒ 三角点 (10/20)
⇒ 鶯張り (10/02)
⇒ ゆっぴ (09/26)
⇒ かぶの入門 (06/12)
⇒ 由紀 (03/16)
⇒ 秋緒 (02/02)