うちらは、電車通学のことを、キシャツー、って言う。部活に通う夏休み、車窓から、海辺の真っ赤なテントに住む男子を見つけて……微炭酸のようにじんわり広がる、それぞれの成長物語。
海沿いを走る一両編成の電車が走る北海道の田舎町。その電車で通学することを「キシャツー」と呼んでいる高校生たち。夏休みはあと10日。テニス部に所属するはるか、あゆみ、このみの3人は毎日キシャツーをしていますが、写真が趣味のあゆみが砂浜に赤いテントが張られているのを見つけました。同じ電車に乗っていた、はるかの幼馴染で公の酒井良夫やお嬢様で近寄りがたい雰囲気を醸し出す野島紗絵も同じ電車に乗っていて、紗絵によるとそのテントの主が前日サックスを吹いていたらしいという。
部活が終わったはるかたちは使われなくなった駅のホームで昼ご飯を食べていたら紗絵がやって来て、テントの主らしい青年を見かけたというのだ。そしてはるかを誘って見知らぬ青年の後をつけはじめた。
その青年・宮谷光太郎は小学生のころ数年一緒に暮らした血の繋がらない姉・崎野夏実を探すため東京からその町にやって来ていた。朝テントを見ていた良夫は光太郎に話しかけ、一緒に光太郎のお姉さん探しをすることになった。
これは夏に読むのにピッタリの本でした。高校2年生、3年生の子たちがこれからの自分の事、恋愛などであれこれ悩む姿が清々しい。探している光太郎の姉がすぐに見つかるのは都合よすぎる?とも思うけど、でもいいんです。
血の繋がっていない光太郎だけでなく、良夫やはるかもそれぞれ訳ありの家庭で育ってます。だけどみんな健全なんです。美少女・紗絵のはるかへの告白には驚きましたが、あゆみやこのみは紗絵の気持ちに気が付いていたっていうし、はるかは「そういうの全然平気」っていうんだから、まぁいいのか。
とにかく読んでいる間中、幸せな気持ちになれる本でした。
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