北海道洞爺湖畔の静かな町・月浦に、りえさんと水縞くんの営むパンカフェ「マーニ」があった。実らぬ恋に未練する女性・香織、出ていった母への思慕から父親を避けるようになった少女・未久、生きる希望を失った老夫婦・史生とアヤ……さまざまな悩みを抱えた人たちが、「マーニ」を訪れる。彼らを優しく迎えるのは、りえさんと水縞くんが心を込めて作る温かなパンと手料理、そして一杯の珈琲だった。映画界の俊英・三島有紀子による初の小説執筆作品。映画「しあわせのパン」から生まれた、とびっきり香ばしくて温かい物語。特別付録として絵本「月とマーニ」を巻末に収録。
同名の映画の監督が書いた小説だそう。色々見ていると映画の隙間を埋めるような小説みたい。映画も見てみたいなぁ。
北海道洞爺湖湖畔の月浦でカフェ「マーニ」を営むりえさんと水縞くん。りえさんはコーヒーをいれ、水縞くんはパンを作る。そこを訪れる悩みを抱えた人たちは二人の料理を食べ、コーヒーを飲み元気をもらう。夫婦という事になっているりえさんと水縞くんにはなんだか距離があるような気がする。
とても素敵な物語なんです。静かだし、料理はおいしそうだし。夢みたい。
「さよならのクグロフ」
デパートで働く香織は羽田でイケメンの彼、岡田に電話をかけている。香織のお誕生日にあわせ沖縄に行く予定だったんだけど、岡田が来ない。香織は真逆の北海道へ行くことにした。新千歳空港の観光課窓口で勧められたカフェ・マーニに行った香織の2泊3日の旅。
「ふたりぼっちのポタージュ」
学校で出された宿題「一番好きな食べ物と一番嫌いな食べ物」そんなの書けるわけが無い。だってそれはお母さんが作ってくれた「かぼちゃのポタージュ」なのだ。お母さんはお父さんと喧嘩をして出て行った。ホテルで働くお父さんは忙しく未久とあまり会えない。ある日、バスに乗らずにバス停の先にあるカフェに行った。
「壊れた番台とカンパニオ」
関西で銭湯をやっていた史生は店をたたみ年上の妻・アヤと一緒に月浦へやってきた。そこは二人が新婚旅行をした思い出の場所だ。アヤが病気になったので死に場所を求めてやってきたのだ。カフェ・マーニに泊まった二人。結婚当初からパンが嫌いと言ってたアヤがパンを手に取りおいしいといった。
「カラマツのように君を愛す」
りえに3度あっただけなのに「月浦で一緒に暮らそう」と言った水縞の日記。文房具会社の営業をしていたボクは純喫茶で休憩するのがすきだった。ある日、喫茶店の窓から見た川の向うのビルの窓から女の人の腕が伸びてきて紙ふぶきを散らした。それがりえさんとの出会いだった。
これがもう本当に素敵なんです。「想う、という事は苦しみです。 その想いが実るか実らないかわからないまま、想い続けることは楽なことではないとボクにはわかっていたのです。」って始まるんです。「だから客観的になる為に日記をつける」と。
まぁ、実際何の仕事も持たずに北海道に移住し、電気も無いところで暮らしコツコツと家を建てながら暮らし、お客が来るのかわからないようなカフェを作るなんて、夢物語ではありますが、それでも素敵!
最後に「もうボクは日記を書かないと思います」ってある。その一言がよかったな。
⇒ アスラン (04/07)
⇒ 脱皮中 (11/10)
⇒ 三角点 (10/20)
⇒ 鶯張り (10/02)
⇒ ゆっぴ (09/26)
⇒ かぶの入門 (06/12)
⇒ 由紀 (03/16)
⇒ 秋緒 (02/02)
⇒ じゃじゃまま (12/05)
⇒ じゃじゃまま (11/28)