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梨木 香歩
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,575
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珊瑚、21歳。生まれたばかりの赤ちゃん雪を抱え、途方に暮れていたところ、様々な人との出逢いや助けに支えられ、心にも体にもやさしい、惣菜カフェをオープンさせることになる……。
21歳、シングルマザーの珊瑚は7ヶ月になる雪を抱え途方に暮れていた。働く為に雪を預けたいのだが保育園の空きがない。そんな時通りかかった家の「赤ちゃん、お預かりします」の張り紙。引き寄せられるように門をくぐり、出会ったののが薮内くらら。くららに雪を預け、以前働いていたパン屋で仕事を始めた珊瑚はカフェを開こうと思う。
なんだか夢中になって読みました。シングルマザーの珊瑚に次から次へと救いの手が差し伸べられるのは「出来すぎ」って感じもあります。最後まで読み終わってみるとなんだか中途半端な終わり方って印象でもう少し珊瑚のこれからを見ていたいって気持ちにもなりました。だけど、いい物語でした。
寝ている雪のおでこにキスしたり、仕事から帰ってきた時に珊瑚に駆け寄ってくる雪を愛おしいと思う気持。読んでいたら、赤ちゃんの匂いとか体温とかを思い出しました。だけど、かわいいだけじゃなく夜泣きがひどい時には泣き叫ぶ雪を部屋に閉じ込めてしまいます。その時の「子供が成長するきっかけは、愛に溢れた体験の中ばかりではなかった」って言葉は印象的。そうなんですよね。子供を育ててれば誰でも同じような事を考えたことはあるとおもうんだけど、珊瑚は自分が子どもの頃母親から見放されて育っているんです。なぜ?って気持ちがあり、同じ道をたどってしまう?っていう心配があり、中々複雑です。
無農薬野菜を使ったおいしそうな食べ物がいっぱい。全然大変そうな様子を見せずにおいしそうな料理を作るくららさん、尊敬します。そして珊瑚が料理につける名前がまたいいんです。
くららさんが語ったアッシジの地震で壊れてしまったフレスコ画の話。この物語のタイトルを見るたび思い出しそう。
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⇒ 式神自然数 (10/21)
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