女同士の友情と連帯、せつない恋、禍々しい関係、淡い想い、忘れられない痛み。植物にちなんだ珠玉の連作集。
野中さん、久しぶりのような気がします。
恋愛話なんだけど、それ以外の日常の中にポツリと忘れられない思いや、切なさなんかが滲み出ていて、元気な時に読んだらいいんだろうけど、心が弱っていたので一緒に切なくなっちゃったりしました。ちょっと辛い読書時間だったかな。
パラパラと読み返してみたら、女友達との何も語らなくても十分にお互いを理解できる素敵な時間がいっぱい書いてあって「あぁ、完全に読むタイミングを間違えた」って思いました。
「銀杏」
大学時代からの女友達が結婚をすると報告しにやってきた。二人でぎんなんを割りながらお酒を飲む。ふと考えるのは辰雄のこと。
美味しいものを食べながら、お酒を飲みながら、友だちと話している間に思い出す彼の事。こういうのってあります。その彼との別れを予感しているところが切ない。
「椿」
毎週火曜日の午前中に出かけて行くのは娘のピアノの先生・真喜のところ。真喜には恋人がたくさんいると噂されている。
真喜との時間が静かで素敵にかかれています。実際の不倫ってこんなに綺麗じゃないんだろうけど…ガラス細工を見て嫉妬をしたいんだけど、でも嫉妬なんて出来る立場じゃない。そんな彼女を襲った最後の出来事は衝撃的でした。娘を産んだ時からのお友だちとの会話がいいなって思いました。
「羽衣草」
母の11歳年下の妹・亜津子おばに会いに行く。
亜津子さんの作る料理が本当においしそう。塩煎餅の上にのせるポテトサラダ(自家製ピクルス入りでパルミジャーノチーズ入りのドレッシングを混ぜ込んである)が食べてみたい!いい天気が「タンサン日和」だっていうのもわかる気がする。会社で隣の男の子の事をまじまじとみて「データが更新されてなかったなあ、と思う」というのですが、そういうことってあるなって納得。
「欅」
伯母のお葬式で久しぶりに会った従兄たち。そして洋介さん。
「昼咲月見草」
奥さんの咲子。そしてそのお姉さんの名前は月夜さん。咲子と出会ってから女性にもてるようになった僕は一人の人と深い関係になってしまった。そのことをしった咲子は家を出た。
「あたし、知りたくないのよ。そんなこと」といいながらも、夫の浮気の事について知ってしまう咲子。なんだかそういうものなんだよねって読んでいて辛くなりました。咲子みたいに逃げられるのは幸せな事なのかもしれない。
⇒ 数(自然数)は、幽霊である。 (11/17)
⇒ 式神自然数 (10/21)
⇒ アスラン (04/07)
⇒ 脱皮中 (11/10)
⇒ 三角点 (10/20)
⇒ 鶯張り (10/02)
⇒ ゆっぴ (09/26)
⇒ かぶの入門 (06/12)
⇒ 由紀 (03/16)
⇒ 秋緒 (02/02)