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「喜嶋先生の静かな世界」森博嗣
JUGEMテーマ:読書


喜嶋先生ほど、クリーンでサイレントに生きている人を、僕は知らない。「いいか、覚えておくといい。学問には王道しかない」先生がおっしゃった、この言葉は、僕の心に刻まれ、それから永く僕を導いてくれる道標となった。

読み終わってから暫く喜嶋先生のことを考えてしまいました。心がしんとなった。

僕は文字を読むことが不得意だったかので勉強が大嫌いだった。本が嫌いだった僕は4年生の時に区の図書館で興味をもっていた電波に関する本を探そうと思った。その1冊を読むことで得られた経験が、たぶん僕の人生を決めただろう。
数学と物理に興味を持っていた僕は、他の教科の苦手を補うため、その二科目が特に難しい大学を選び、現役合格。しかし、大学での授業内容は失望させられるものだった。
しかしその大学で、僕にとって大きな転機が訪れた……後の人生を変えることになった人物・喜嶋先生に出会ったのだ。
大学四年になって、卒論を書くために講座配属になった。僕は、半年前に赴任してきたばかりで競争率の低い教授・森本のところを希望し、配属に。しかし森本は、前の職場との掛け持ちだったことから、助手の喜嶋先生の世話になることになったのだが、早々に海外留学に行ってしまい、半年以上は親切な院生の中村の指導を受けることになったのだった。
やがて、彼が帰国。師事する中で、研究の、そして学ぶことの奥深さと面白さを知ることに……
橋場君は非情に淡々と自分のことを語ります。字を読むのが苦手だった小学生の頃、電波について調べたいと思い入った図書館での経験。意味のわからないものに直面したとき、それを意味のわかるものに変えていくプロセス、それはとても楽しかった。考えて考えて考え抜けば、やがて意味の通る解釈が訪れる。そんな経験をした橋場君は本をたくさん読み、大学に入ります。卒論を書くために配属された講座で助手の喜嶋先生につくのですが、喜嶋先生が不在だったのでドクタの中村さんに指導をしてもらって卒論を書きます。その時に出てくる喜嶋語録の数々。それから喜嶋先生に出会い、研究について知り、学ぶことの面白さを知って行くのです。大学生の同級生清水スピカからの突然の告白だったり、それからのスピカとの付き合いも実に淡々としている。淡々としていながら結婚もして、幸せな家庭を築いちゃった橋場君、結構すごい人だなぁって思いました。

橋場君が語る喜嶋先生は実に魅力的です。無駄がない。論文の提出日に構想が練りあがり、提出場所に行って論文を書き上げちゃったりするところが変人っぽくて好き。計算機センターで沢村さんが通る時にはきっちりと沢村さんを見ているって言うのはかわいらしいなって思ったし。恋人がいる沢村さんにプロポーズしちゃうその行動も、断られたのに「出会うのが遅すぎたんだ…今のところはね」といっちゃうあたりが実に喜嶋先生らしい。

大学で卒論を書かなかったので、卒論ってこういうものなんだって言うのを知り、大学院の修士課程、博士課程ってこういう場所なんだって言うのを知ることが出来て、なんだかとても得した気持ち。

研究とはまだ世界で誰もやっていないことを考えて、世界初の結果を導く行為。「既にあるものを知ることも、理解することも、研究ではない。研究することは、今ないものを知ること、理解することだ。それを実現するための手がかりは、自分の発想にしかない」と喜嶋先生はいいます。橋場君が修論を書いている時にある問題について一つの事を見つけ、それについて喜嶋先生に質問します。いつも橋場君がどんな質問をしても、すぐに答えてくれるか、ヒントをくれる先生が「うーん。わからん」といい、それから2人で8時間くらい話し合うのです。その様子が、2人のワクワクしている感じが素敵だなって思いました。そして研究するって事は一つの壁を乗り越えたと思ったら、次の新しい壁が待っていて、常に登り続ける事だそう。ちょっと前に読んだ「おやすみラフマニノフ」の中でも音楽家が目指すところには終点はないみたいなことが書いてありましたが、どこまでいっても「その先」があるんでしょうね。

ラストの喜嶋先生の取った行動にはちょっとビックリ。でも、そういえば読み始めたとき橋場君の口調から「喜嶋先生はなくなってしまったのかな?」と思っていたのを思い出して、まぁ納得。喜嶋先生と結婚した沢村さん、最後に自殺していました。ちょっと衝撃的でした。なぜ?大学では自殺者が多いって書かれていたけど、沢村さんも喜嶋先生と一緒にいて挫折感を味わったのかな?
| 本:ま行(森博嗣) | 21:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
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