これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞。
何も知らずに読み始めたのですが、最初の「ミマクリ」が「R-18文学賞」受賞作品だったのね。最初から「年上の主婦とコスプレのセックスに耽る高校生」卓巳が主人公の物語で、衝撃的でした。ムムム、気持ち悪いかも…って思いながらも、続きが気になる。その次の物語も気になる。そんな吸引力のある連作短編集。
どの人たちもため息しか出てこないような生活をしているなぁって思います。卓也なんてまったく何も考えずに、若い男のこの好奇心からなのか始めてしまった人妻との関係だったのに、気がついたらネットに動画流出なんて事になってしまって…現代の怖さがひしひしと感じられます。
「ミクマリ」
高校1年生の卓也は放課後、近所のマンションに住むあんずの所に通う。ベッドに横たわるあんず。卓也はあんずに言われた衣装を着て、言われたとおりの台詞を言う。夏休み前に松永に告白された。松永と付き合うためにあんずに「会わない」と言う。
「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」
人妻・あんずこと里美。子どもの頃からいじめられっ子だった里美は慶一郎と結婚した。慶一郎もいじめられっ子だったらしい。子供を待ち望む義母・マチコ。
あんずこと里美のどんな男でも拒否しなかったという学生時代の話に驚いたと思ったけど、里美がオタクなところも受け入れてくれる慶一郎。時々はキレるけど、いい人見つけたじゃないって思ったんだけど、義母・マチコが強烈です。
「2035年のオーガズム」
卓也の事を好きな松永は夏休みの間に卓也と初体験を済ませたいと思っている。が、最近卓也は冷たい。松永の兄は子どもの頃から頭が良かったが、次第に部屋に引きこもるようになって長野の宗教団体に入ってしまった。台風が来て、家が浸水。
卓也の動画を見ても、それでも卓也が好きって思える松永はすごい!
「セイタカアワダチソウの空」
卓巳の親友・セイタカこと福田良太の物語。母親は恋人と一緒に住み、ボケはじめたばあちゃんと暮らすセイタカ。朝の新聞配達に始まり、放課後のコンビニとバイトを掛け持ちしておばあちゃんを食べさせている。バイト先で出会った田岡さんが勉強を教えてくれる。
すごい世界。よくもちゃんと高校生になったねって思いました。1話目で卓也の友だちとして出てきた時にはこんな生活しているとは思えなかった。田岡さんに勉強を教えてもらい「大学にも行けるのかも…」と希望をもつラストですが、田岡さんの最後が衝撃的でした。
「花粉・受粉」
助産院を家でやっている卓也の母。最近、卓也は学校にも行かずに部屋にこもっている。ネットに流出してしまった卓也がコスプレをしてセックスをしている映像が原因だ。
卓也がひきこもった原因も知っているのに、布団に包まっている卓也が死んでいないかをそっと見たり、それ程干渉せずに見守っている母が素敵です。卓也が急にいなくなった時にも、まずは子供をとり上げて、そして探しにいくんですから。神社での2人にジーンときます。
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