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評価:
吉田 修一
新潮社
¥ 1,470
(2009-08-22)
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彼女が暮らす街までの電車の経路を、ずっと頭の中で考えている。その街に彼女しか存在しないような感じ。その街に自分だけが存在しないような感じ――十年の歳月をかけて書きためた、「忘れられない場所」をめぐる短編集。『パレード』から『悪人』までのすべてのエッセンスが詰めこまれた、ファン必携のマスターピース!
普段使う言葉じゃないんだけど、この本を読み始めて最初に感じたのは「スタイリッシュだわ」って事。泥臭さがまったくないというのか、さらりと物語に入りさらりと終わる。さらりと終わって、すぐに忘れちゃいそう。
「零下五度」で日本人の女性が映画で見たと思い、韓国人の男性が日本の本で読んだと思う物語。ディテールは少し違うんだけど、だいたいの内容がこんな感じ。「離婚したばかりの男が主人公。男は安売りネクタイばかりを買ってしまう。「白いのを買うと赤いのが欲しくなる」というと「細いのを買ったら、太いのが欲しくなるんじゃない?」と言われる。」その映画や本をきっかけに二人ともが「何かを思い立ち、とても幸せな気分になった」と言う。だたお粥屋の前ですれ違っただけの、国籍も違う男女が同じもので同じ気持ちになってる。なんだか不思議で素敵な物語でした。
「日々の春」の中の文章。
誰かをゆっくりと好きになれるのだろうか。誰かを好きになったことをゆっくりと認めることはできるかもしれない。でも,ゆっくりと誰かを好きになることはやはり不可能なような気がする。
すごく印象的でした。
次男が本を見て「この本、すごく面白い」って。表紙がエアメールの封筒のようになっていて、セロファンから英語で書かれた地図が覗いてる。
「日々の春」
新人の立野君が気になる私。
「零下五度」
冬の韓国一人旅をする女。ガイドブックに載っているお粥屋の前で警報機が止まらなくて困ってる年配者を見かける。お粥屋で食事中に外にいるおじさんを助けた男。
「台風一過」
家出をして3日目に自宅に泊めてくれた大学生の部屋で見たDVDを真似して学校に忍び込みプールに飛び込んだ。次の日も雨。公園のトイレの前で雨をしのぐ。公園を通るとそこに立つ男がいた。今から家の近くのホテルに泊まりにいく。嫌な事があると泊まるこのホテル。
「深夜二時の男」
大学最後の1年。彼と別れ一人暮らしをした。隣人は薬学部に通う高村君という男の子だ。薄い壁なので高村君の存在は常に感じる。
「乳歯」
団地で撮影があるらしい。里佳子とその息子流星と暮らすオレ。
「奴ら」
向井は電車の中で痴漢にあった。まさか男のオレが?と思いながらもされるがままだったうえに、やったほうはニヤリと笑っていた。帰り道、急に腹立たしさを感じた。
「大阪ほのか」
大阪本社勤務になった広志を訪ねた。お互いに40を目前にして独身。
「24 Pieces」
親友を裏切ること。恋人を裏切ること。どちらがつらいのだろうか。
「灯台」
17歳のぼくと一緒に歩くあの街。
「キャンセルされた街の案内」
東京で暮らす「ぼく」のアパートに、故郷長崎の兄が現れ住みつく。兄は何の仕事もせず、ただ漫然とそこにいる。ぼくは社会人をしながら小説を書いている。
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