夜の光
坂木 司
慰めなんかいらない。癒されなくていい。欲しいのは、星の距離感。これは天文部に集うスパイたちが、最前線で繰り広げた戦闘の記録。
秋に読むのにピッタリの本でした。夜、暖かい飲み物を飲みながらシミジミ読むのにピッタリ。
天文部の4人の男女高校生の物語。クールなお嬢様のジョー。芸術家きどりのゲージ。ギャルのギィ。温厚な部長のブッチ。それぞれがコードネームを持つスパイ。学校や家では常に仮面を被り、スパイ活動をしている。家族だったり、価値観の押し付けだったり、将来だったり、それぞれが感じる違和感。そんな4人が唯一安らげる場所、それが天文部。心地のよい距離感を保ち、スパイという共通の秘密を持つ仲間。
高校3年生の一年間を4人が順番に自分のおかれてる状況と夜の観測会について語ります。そしてその時あったちょっとフに落ちない出来事を推理する4人。ジョーが結構鋭く物事を見据えています。
女の幸せは結婚だと思い込んでいる頭の固い父親に向学心が理解されない、「ぱっと見はお嬢様っぽい」=ジョーこと中島翠。恵まれた家庭ゆえにかえって何をしたらいいか判らないまま軽口を武器とする、「自称芸術家」=ゲージこと青山孝志。リストラされて酒乱、暴力を振るうようになった父親に愛想をつかした、「どう見たってギャルじゃん」=ギィこと安田朱美。年功序列、独裁的な祖父から百姓仕事を中学の時から負わされている、天文学部部長=ブッチこと黄川田祐一。高校3年生なのになんだか大人びてるというのか、それぞれ家族との距離を感じ一人でがんばっています。親ってこんなにわからずやかしらね。
観測会の時に屋上や外で作る料理が美味しそうでした。ブッチが家から持って来た野菜をメインに網焼きやカレーや鍋、ギィが入れるコーヒーに寒い夜にはお汁粉。ポツポツと会話しながら食べて飲んで、星を見上げる。
ゲージがいちいち言葉の最後につける「ベイビー」に「私は赤ちゃんじゃないし、あなたの恋人でもない」と言うジョー。ジョーが律儀に返すその言葉が好きでした。
⇒ 数(自然数)は、幽霊である。 (11/17)
⇒ 式神自然数 (10/21)
⇒ アスラン (04/07)
⇒ 脱皮中 (11/10)
⇒ 三角点 (10/20)
⇒ 鶯張り (10/02)
⇒ ゆっぴ (09/26)
⇒ かぶの入門 (06/12)
⇒ 由紀 (03/16)
⇒ 秋緒 (02/02)