こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり
畠中 恵
江戸・橋本町の下っ引き宇多が、恋しい思いを伝えられぬまま亡くしたはずの於ふじが帰ってきた
――幽霊の身となって!!
神田川でこときれた於ふじと千之助。兄妹の死の真相を探るうちに、9人の幼なじみたちそれぞれの恋や将来への悩み、思いの糸が絡み合って、妙な騒ぎが次々と……。
タイトルの「こころげそう」は「心化粧…口には言わないが、内心恋こがれること」という意味だそうです。「転げそう」だとか「こころげ草」とかそんな感じをイメージしてタイトルを見てました。
幼馴染で仲の好かった9人(男4人と女5人)その内の2人、大和屋の千之助と於ふじの兄妹が川にはまって死んだ2ヵ月後から物語が始まります。主人公の宇多は岡っ引き・長治のところで世話になりながら下っ引きとして働いています。亡くなった於ふじに自分の想いを打ち明けられなかったことを悔やんでます。ところが於ふじの父親で大和屋をたたんで長屋の大家となった由紀兵衛の長屋で幽霊騒動が持ち上がり、宇多が調べる為由紀兵衛を訪ねると、何とそこに於ふじの姿が!於ふじ父親が心配のあまり幽霊となって父親の側にいたらしい。
下っ引きの宇多。宇多が世話になっている岡っ引き・長治の娘・お絹。大和屋の息子で亡くなった千之助。同じく娘の於ふじ。大工の棟梁の娘・お染。野菜のぼて売りの弥太。両国の茶屋ではたらくおまつ。口入屋・永田に奉公する重松。岡本屋の一人娘・お品。幼い頃は仲良く遊んでいた9人だったけど、年頃になればその中で想ったり想われたりとなかなかうまくいかない。宇多は於ふじを想い、お染と弥太は恋仲だが、お染の父親は大工との縁談を望む。おまつは弥太の事が好きで、お染と弥太の仲が終わればいいと思い、重松はそんなおまつに想いを寄せる。お品は亡くなった千之助に恋心を伝えるも千之助に断られていた。そしてお絹は宇多の事が好きなんじゃないかなって思います。
そんな9人の恋模様に事件が絡み、幽霊となった於ふじや妹のような存在のお絹らの助力を得ながら、宇多が於ふじが亡くなった原因、幼友達の身の上に振りかかった事件を解決しようと奮闘する物語。
主人公の宇多。男女間のあれこれにはすごく疎いんです。自分の気持ちを伝えられないまま於ふじが亡くなってしまった事をすごく後悔していたはずなのに、幽霊となって自分の前に現れた於ふじにも全然気持ちが伝えられない。そしてそのほかの人たちも恋の矢印が色んな方向に向いて絡まって。岡本屋の主人が言う「ままならんことも、おおいわな」に本当にねぇ〜と頷いてしまいます。
ラストはそれぞれが大人になって進む方向が見えてくる素敵な終わり方。宇多は於ふじに気持ちが伝えられてよかったです。そしてお絹と宇多の今後が気になる。宇多はそこら辺には全く疎い感じなので、お絹の尻にしかれそうですが。
⇒ 数(自然数)は、幽霊である。 (11/17)
⇒ 式神自然数 (10/21)
⇒ アスラン (04/07)
⇒ 脱皮中 (11/10)
⇒ 三角点 (10/20)
⇒ 鶯張り (10/02)
⇒ ゆっぴ (09/26)
⇒ かぶの入門 (06/12)
⇒ 由紀 (03/16)
⇒ 秋緒 (02/02)