架空の球を追う
森 絵都
異国で、町のスーパーで、銀座の飲み屋で、タクシーの中で、野球場で……。日常の光景からふっと湧き上がってくる、人生の機微をユーモラスに描き出す11篇を収録した短篇集。初出「オール讀物」
森さんの児童書も大好きだけど、こうやって同世代の女性の視点で書かれた物語も共感するところいっぱいで好きです。やっぱり森さんはいいなぁ。
日本だけでなく色々な国での出来事。笑えるものから、しみじみしちゃうものまでバリエーション豊かでした。一つずつ物語に入り込んでしまいました。
最初の「架空の球を追う」を病院の待合室で読み「欽ちゃん走り」のところで思わず「プププ」とふき出してしまいました。シーンとした待合室で…
「銀座か、あるいは新宿か」の高校時代の友達が飲み会を銀座にするか新宿にするかって話もその話をしながらも、メニューについて語ったり、近況だったり、隣の席の人たちが迷惑がるのを感じていても、それでも会話は尽きない。そんな様子が「わかる、わかる」って思いました。
「パパイヤと五家宝」も庶民派スーパーじゃなくちょっと非日常のスーパーでセレブになりきる主人公が、リアルセレブを目にしてその人のかごの中身に注目しながら同じようにかごに入れていく様子。わかる!わかる!他人のカゴって気になるんだ。時々紀伊国屋なんて行くと、必要以上にウロウロしていりもしない調味料をカゴに入れてみたり…最後に方向転換したのに、牛脂が…っていうのに笑いました。
最後の物語が「彼らが失ったものと失わなかったもの」だったのもすごくよかったです。イギリス人夫妻の暮らしぶりが見えてくるようでした。こうやってキチンと生活しなければいけないなぁと。
⇒ 数(自然数)は、幽霊である。 (11/17)
⇒ 式神自然数 (10/21)
⇒ アスラン (04/07)
⇒ 脱皮中 (11/10)
⇒ 三角点 (10/20)
⇒ 鶯張り (10/02)
⇒ ゆっぴ (09/26)
⇒ かぶの入門 (06/12)
⇒ 由紀 (03/16)
⇒ 秋緒 (02/02)